スペインの太陽と影、祝祭と孤独の相反が山口敏郎の精神に宿り,光彩を放ち、軽 やかで重厚な作品を生み,それが魅力となり、山口はこれからも性差、年齢、国籍 といったあらゆる「壁」を透過する作品を創り続け、イベリアの「奥深きもの」を掴もうとするに違いない。 |
1956 岡山県生まれ |
1978 武蔵野美術大学卒業 |
1982 マドリッドに移住する、ESPACIO TAO 主宰 |
「Mind Landscape - 心の風景」 山口敏郎 |
春になると明るい陽光が降り注ぐバルのテラスに一人で座りワインを飲むことが日課となる。 最初色々な考えが泡のように浮かんでは消える。 その「考える」という行為は当然「言葉」を必要とする。 しかしその時に感じていることの全体像を一挙に捕まえて表現することは不可能なので、それを 断片化しさらに言葉に変換し単純化する作業を無意識に行っている。 そうやって断片化、単純化した言葉の連鎖が際限なく続いていくうち、やがて何も考えていない状態がやってくる。目の前にある家や木々、通る車や人の姿が網膜上を擦過していく色の繋がりとなり、人々の話し声やグラスのぶつかる音が単に音の連続となっているのに気づく。 つまり、物の個別性や意味性が消え、これはこれ、あれはあれという区別がない一つの繋がった世界が現れる。正にそういった時にインスピレーション、いわゆる直感が電光のように閃く。 直感は宇宙の叡智からくる膨大な情報量を一瞬で教えてくれるのだ。何百時間と考えたものよりはるかに大きな情報量を直感は含んでいる。この何も考えていない状態を古来より人は「無心」と呼んできた。心にピンと響くポジティブなものを感じる為にはボーっとした時間を持つことが重要になる。そして「時間」のみが心を育てる。 |